住んでみてわかる本音の中国

2001年から中国で生活している駐在員です。 当時は、中国にはバラ色の未来があるように誘致が進み、日系企業が次々に進出していった時代です。役人や中国企業との接待で毎日のように白酒を飲まされました。 日本との物価差も大きく、お金持ちになったような錯覚を覚えた時代でもありました。 それから20年、中国は大きく変わりました。そのスピードは日本や欧米とは比較になりません。今もそのスピードは衰えることなく変わり続けています。 激動の時代の中国を過ごした経験を、少しでも表現出来たらと思っています。

中国の銀行で納税者番号の登録義務化(外国人)

午前中、銀行に行きました。
納税者番号を登録するのが目的です。

外国人に対する、新しいルールです。
2018年8月1日より、中国での個人所得税申告システムがアップデートされています。
税率が変わったり、確定申告的なものが導入されたりと、いろいろ変わります。
その中で、我々外国人に対しても、確実に課税するためいろいろな要求があります。
納税者番号登録は、租税条約に基づく国家間での情報交換において利用されるものと思われます。
(租税条約は、各国で異なるローカル法である税制の差異を特別に条約で調整することで、それによって生じる二重課税や租税回避、脱税を防止することにあります。)

今後中国で銀行口座を作る場合は、必ず納税者番号を登録する必要があります。
日本で納税している人は、日本のマイナンバーを申告すれば大丈夫です。今のところ口頭で番号を言うだけでOKです。原本やコピーは要求されません。
中国で納税している人は、中国での納税者番号が必要です。

ところが、これが意外にやっかいで、納税者番号は、会社の誰も知らなかったので、税務局に行って調べました。(ひどい会社ですね)
納税者番号は、Wの後に数字がたくさん並んでいました。

f:id:cnas:20190301124840j:plain

 

あらかじめ、口座のある3つの銀行に、登録が必要かどうかの確認をしたら、温度差はあるものの必要だという結論になり、一気に3つの銀行を回りました。

◆工商銀行
電話では、一番まともな回答した銀行です。
その内容は、外国人は納税者番号がこれから必要だという上からの指示が出ているので、できるだけ早く登録に来てください・・・というものでした。

窓口の女性はショートカットの明るい感じです。

f:id:cnas:20190301172013j:plain


しかし、この件は、よく知らないようでした。少なくとも彼女がこの処理をした経験はない模様。他の担当に聞いたりして、処理をしていました。
納税者番号の頭にWの文字があり、残りは全て数字ですが、彼女はPCの画面で数字しか入力できないため、困っていました。(おそらく中国人の納税者番号は、数字だけで構成されているものだと思います)
他の同僚に聞いていましたが、その同僚もよくわかりません。
結局彼女らの出した答えは、「Wは外国人についている記号なので、そもそも外国人しか登録する必要がないこの制度では、Wの入力は必要なく、その後に続く数字だけ入力すればいいはずだ」でした。
おいおい・・・! 大丈夫かよ?

三択です。行員が勝手に選んでくれました。
①中国に居住して中国でのみ納税している
②中国に住んでいない
③中国に或いはその他地域で納税している

f:id:cnas:20190301140345j:plain


②にチェックを入れました。あれ~、それだとおかしいんじゃないかな?
中国に住んでるし、中国で納税してるんだけど・・・
まっ、いいか~

住所は住んでいるアパートがちょくちょく変わるので、会社の住所に変更してもらいました。

最後にその行員は、日本人は真面目だね、この辺は韓国人が多いけど、誰もこんな指示は守らないよ~(^0_0^)
だそうです。

◆中国銀行
電話では最もこの制度を理解していない銀行でした。
私の担当マネージャに聞いたら、納税者番号の登録の必要性自体を知りませんでした。周りの同僚に聞いても、知りませんでした。ちなみにここは私のメインバンクで、給与はここに振り込まれますので、納税者番号は登録済みだと言われました。。
それが、後の情報では、まだ登録していないので、別途登録に行った方がいいということになりました。

順番待ちカード発行機に銀行ガードをかざすと、「V〇〇〇」という用紙が出てきました。これはVIPの意味です。
ここでは私はVIP待遇なので、ディズニーランドのファストパス状態です。
列をすっ飛ばして、すぐに受付してもらいました。
窓口は男性でした。中堅クラスのしっかりした感じです。

f:id:cnas:20190301172017j:plain


以前の電話口の内容とは異なり、この件は熟知している気がしました。
すいすいと手続きが進みました。

三択です。ここでも行員が勝手に選んでくれました。
①中国に居住して中国でのみ納税している
②中国に住んでいない
③中国に或いはその他地域で納税している
彼は③にチェックを入れました。

ケイタイのアプリの中で、「我的個人信息」の中の「個人税収居民身分声明」というところから入って、個人でも登録したり、修正したりできるそうです。
あとで確認して、出生地の住所のスペルが間違っていたので、自分で修正しました。

f:id:cnas:20190301172002j:plain

この画面から入ります。

f:id:cnas:20190301171956j:plain

ここの内容は自分で書き換えられます。

f:id:cnas:20190301171950j:plain

納税者番号もここで記入。最後に下の青い部分をクリックすると更新終了!

な~んだ、わざわざ銀行に行かなくても、スマホのアプリで、いつでもどこでも自分で登録したり更新したりできるのです。最初に知ってたら銀行に来なかったのに・・・

 

せっかくここまで来たので、ついでに建設銀行にも行ってみました。

◆建設銀行
ここは電話口で担当者に聞いたら知りませんでした。しかし別支店にいる専門の担当者に聞いたら、納税者番号の登録が最近必要になったことを知っていました。ただし彼らは実際に運用はされていないという認識です。私は、口座開設時にすでに納税者番号の登録を済ませているということでした。
そんなことした記憶はないのですが・・・そもそも、納税者番号が何番なのか知りませんでした。あとで調べたら、知らない中国人の納税者番号が記載されていました。う~ん、なんかわけわからない・・・

ここもなぜか順番待ちはVIP待遇でした。
給与振込してないし、最近口座を開いたばかりなのに???
よく考えたら、理財をたくさんしているので、自動的にそういう待遇になったのかもしれません。

受付は、大坂なおみに眼鏡をかけさせたような、ちょっと太目の実習中の行員でした。

f:id:cnas:20190301172008j:plain


実習中なので、必死に実直にマニュアル通りにこなしている感じでした。
①中国に居住して中国でのみ納税している
②中国に住んでいない
③中国に或いはその他地域で納税している
ここでは①にチェックが入りました。
これにより、3つの銀行全てが、違う選択をしたことになります。
おお~大丈夫かよ!

まあまあいい加減です・・・
こんなもんです。

これをしないとどうなるか?

可能性として考えられるのは、口座を凍結されるかもしれないということですが、あまり心配いりません。
実はまだ登録しなくても大丈夫なようです。
登録率は極めて低いという話です。

そもそも、中国の4大バンクの3つを回って、こんな有様なので、まだまだ上の指示は下まで浸透していません。

ただし、これから急に変わるかもしれない・・・それが中国です。
アンテナは高めに!
また何か変わった動きがあったら、お知らせします。

 

◆◇◆◇◆◇ 追加情報 ◆◇◆◇◆◇

 2019年1月1日の個人所得税法改定に伴い、3月14日に、「中国に住所がない個人の居住時間判定基準の公告(財政部・税務総局公告2019年第34号)」と、「非居住者個人と住所のない居住者個人に関する所得税政策の公告(財政部・税務総局公告2019年第35号)」が公布されました。これは、2019 年1月1日にさかのぼって、施行されています。

この中で6年ルールの解釈を見てみます。

◆そもそも6年ルールとは?
 個人所得税法実施条例第4条には、「中国国内に住所を有せず(外国人の事)、中国内の居住が、累計満183日の年度が連続して6年未満の場合、主管税務機関の届出により、その中国外を源泉とし、かつ国外の組織または個人が支払う所得について、個人所得税の納付を免除する。中国国内において居住して累計満183日のいずれかの年度に中国を離れて30日を越えた場合、その中国国内において居住して累計満183日の年度の連続年数は改めて計算する」と規定されています。
 つまり、課税年度期間(暦年)に、183日以上中国に居住した年度が、6年未満であれば、所定の手続をする事で、国外源泉所得に対する課税は免除され、中国源泉所得に対してのみ個人所得税を納税すればよいことになります。
 旧税法(実施条例)には、5年以内の場合は、税務機関の許可に基づき国外源泉所得を免除しうることが規定されており、「5年以内から6年未満」への変更であり、基本は同じ期間と思えますが、税務総局は、記者発表で、「免税条件を、5年未満から6年未満に緩和した」と発表しています。これは、中国の法律および運用では、以下と未満の区別が不明確な場合が多く、それに起因するものと思います。
 以下の記者発表のケーススタディを参考にすると、6年以内は、国外源泉所得の課税免除ができ、7年目から全世界所得課税に切り替わる(つまり、6年未満ではなく、6年以内)というのが、税務機関の考え方の様です。

◆34号公告の内容
 34号公告では、以下の内容が規定されています。
 ① 満183日以上滞在が6年間継続するうちの、どの年度でも、連続30日超の出国があれば、期間継続はリセットされる。
 ② 連続6年のカウントは、2019年1月1日より開始され、それ以前の滞在は、全て白紙とされる。
 ③ 入出国日で、24時間に満たない日については、これを切り捨て、滞在日数にはカウントしない。

「2019年1月1日より開始」が重要で、私のように長く中国に住んでいるものでも、2018 年末までの滞在は、全てキャンセルされるので、2019年からの計算開始となります。よって、2019年から2024年の期間は、国外源泉所得に対する課税は免除されることになります。