住んでみてわかる本音の中国

2001年から中国で生活している駐在員です。 当時は、中国にはバラ色の未来があるように誘致が進み、日系企業が次々に進出していった時代です。役人や中国企業との接待で毎日のように白酒を飲まされました。 日本との物価差も大きく、お金持ちになったような錯覚を覚えた時代でもありました。 それから20年、中国は大きく変わりました。そのスピードは日本や欧米とは比較になりません。今もそのスピードは衰えることなく変わり続けています。 激動の時代の中国を過ごした経験を、少しでも表現出来たらと思っています。

最近の中国のPM2.5事情

私が住んでいる華東地域は、昔から霧が多いことで有名でした。
冬の朝、日が昇るころに起きると、景色が真っ白になっており、数百メートル先の建物は全く見えません。普段見慣れた風景から一変した様子が、情緒があるなぁと感じていたのは10年ほど前までした。

今日の天気予報は「晴れ」

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これでも、快晴なんです・・・

しかし、外の景色は快晴から程遠いものでした。昼になって多少霧が晴れてきても、相変わらず空はどんよりとくすんでいます。
この季節、青い空はほとんど見られません。


情緒を楽しむどころではありません。大勢が巨大な収容所の中に閉じ込められ、どこにも逃げ場の無い状態で、PM2.5という毒ガスが放たれたようなものなのです。

 

それでも最近、夏は青空を見ることができる日が増えました。
しかし冬が近づくにつれ、どんどん空気が悪くなっていくのが、写真を見てもわかります。

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夏のころの綺麗な空

 

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なんかちょっと霞んできました

 

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ほとんど見えない!


2~3年前、声が出なくなったことがありました。自分では大気汚染のせいだと確信しているのですが、病院に行っても、PM2.5との因果関係はなかなか実証できません。

 

以前は、PM2.5だけの数字をとやかく言うことが多かったのですが、このごろはAQIで表現するようになりました。
天気予報でもメインはAQIの数字を使って、PM2.5等の詳細数字は、別途付随情報として見ることができます。


AQIというのは、空気質指数または大気質指数(Air Quality Index)という意味で、いくつかの国や地域で採用されている大気汚染の程度を示す指標だそうです。計算方法は複雑なので、ここでは紹介しません。

 

ちなみに、アメリカでは、アメリカ合衆国環境保護庁というところがAQIを定め、大気汚染物質濃度の観測を行いながら、指数を発表しているそうです。

アメリカのAQIは6段階で、指数が100を超過すると敏感な人に影響が生じるとされています。

 

これに対し中国では、2012年から空气质量指数AQIを発表しています。
中国も6段階となっていて、対象物質はPM10、PM2.5、一酸化炭素、二酸化硫黄、オゾン、二酸化窒素の6種類です。

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中国のAQI基準

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 

 

スマホアプリの天気予報では、各都市のAQI値をほぼほぼリアルタイムに見ることが出来、さらに順位付けまでしてくれます。

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上海のAQI

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上海の各スポットのAQI

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ランキング上位

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ランキング下位

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ランキング最下位

 

現在、北京では全人代が開かれています。
期間は3月5日から15日までです。
その影響か、いつもは数字がわるい北京が、今はかなりいい数字をたたき出しています。

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北京のAQI

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北京の各スポットのAQI


強制的に工場の操業を停止したり、車の規制を行ったりするそうです。


私の住んでいるあたりは、どちらかというと、悪い方でしょうか。
その割には、マスクをして歩いている人は、あまり見かけません。
さらに、昔ながらの習慣なのか、窓を開けたがる人が多くて困ります。
新鮮な空気を入れ替えたいのはわかるのですが、外の空気は部屋の中より遥かに数字が悪いというのを理解していないのでしょうか?・・・やっぱり習慣なんでしょうね。

 

世界中のAQI値を地図上でリアルタイムに表示するサイトがあります。

リアルタイム気質指数ビジュアルマップ

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リアルタイムAQIマップ(世界全体)

これを見ると、やっぱりアジア、特に中国・インドあたりが悪い傾向があります。

東アジア部分を拡大すると、

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今は中国華東地区、悪いですね。

韓国も騒いでいるだけあって、あまりよくありません。

日本では、偏西風で中国・韓国からの影響を受けやすいのか、九州があまりよくありません。さらに西日本、東日本、東北となるにつれて、空気が綺麗になっているのが一目瞭然です。

 

中国からの影響を問題視している韓国に対し、中国側では、「北京が良い数字なのに、韓国はそれより悪いのだから、関連性は無い」という意見もあるそうです。

いやいや、北京は全人代により、ピンポイントで特別対策してるからですよ。

全人代終わると、おそらく北京も真っ赤になると思います。

 

しかし、さすがにおおらかな中国人たちも、気にする人がどんどん多くなってきています。特に子供を持つ家庭が気にします。そのため、空気清浄機がよく売れています。数少ない自己防衛策の一つです。

家庭用空気清浄機 販売規模推移(2016年実績~2022年予測)を見ると、世界市場の20~30%は中国で売られていることになります。

以前はシャープやパナソニック等の日本のメーカー製がもてはやされて売れていたのですが、最近は、圧倒的に中国メーカー製が増えています。(単位:千台)

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【出典】「グローバル家電市場総調査 2018」富士経済, 2018/02/05


この状況、さすがに中国政府もそこそこ真剣に対策に取り組んではいます。

大気汚染の元凶の一つ、自動車ですが、政府はEV(電気自動車)化するのに積極的です。補助金を出したり、ナンバープレートを取得しやすくしたり(上海などは、一般の自動車のナンバープレートは入札制で、日本円で百万円以上かかりますが、EVでは無料化)、自動車メーカーにもさまざまな補助を行って来ました。

しかし、リチウム電池の価格がなかなか下がらず、未だに同クラスのガソリン車の車体価格をはるかに上回る状態です。これだとなかなか消費者はEV(電気自動車)に手を出しません。

そのため、このところ補助の勢いも無くなりつつあります、流石の中国政府も息切れ気味なのでしょうか。


一方、汚染物質を大気中に排出している工場に対しては、中央政府からの指示で、各地方政府が対策しています。

私の住んでいる周辺では、AQIの数字が悪くなると、黄色警報⇒30%減産、オレンジ色警報⇒40%減産、赤色警報⇒50%減産、なんて指示が飛んできます。
ちゃんと守ってないと、抜き取りで立ち入り検査をされることもあるようです。

 

こんな中で、中国に住んでいる我々は、少しづつは良くなっているんじゃないかと言うかすかな希望のもと、なんとか生活はしています。

でも明らかに寿命は縮めているでしょうね・・・

 

こういう状況下にあるからこそ、「日本に住む幸せ」を実感します。